桜しべ踏みて母校の月日かな 津端きしを
(第24回「オール学習院の集い」俳句会最高点句)
●学習院俳句会合同句集「岩ひばり」第1句集(昭和31年刊)に寄せられた
小宮豊隆先生(当時学習院大学教授 文学部長)の序文
この句集の名前をつけてくれと頼まれた。私は日郎君の「天涯に雲たむろせり岩ひばり」の句が気に入ったから『岩ひばり』を句集の名前にしたらどうかと思った。
しかし「岩ひばり」といふ言葉を、私は聴いたことがない。それで私は、手近の角川書店の『俳句歳時記』を探してみたが、それには「岩燕」はあるけれど、「岩雲雀」はない。しかもこの句は「岩ひばり」といふよりも「岩つばめ」といった方が、私には遥に適切である気がするし、殊にこの句が気に入った理由も、私の眼は「岩ひばり」と読んでゐたにも拘らず、私の頭はそれを「岩つばめ」と受け取ってゐたせゐであったやうに思ふ。しかし日郎君のこの句は、「ひばり」と「つばめ」と書き誤ったのではなく、事実日郎君は白馬岳で「ひばり」を見たので「つばめ」を見たのではなかったのかも知れない。もしさうだったとすれば、私はこの句集の名前を、一往は『岩ひばり』といふことにして、実際は『岩つばめ』を意味するのだといふことにしてはどうかと思ふ。
もちろん外の諸君が、そんな無理な名前は困るといふやうだったら、この案は撤回するより仕方がない。
昭和三十一年十二月十一日 小 宮 豊 隆(原文のまま)
(注)日郎君:岡田日郎(31年国文) 「山火」主宰 俳人協会副会長
●合同句集「岩ひばり」発刊
学習院俳句会合同句集「岩ひばり」の第11句集が平成22年10月発刊されました。参加52名、各20句、計1040句の作品が収められています。ご希望の方は世話人まで。(残部僅少)
●新春俳句会開催
恒例の新春俳句会が平成23年1月19日「霞会館」において開催されました。句会には過去最高の38名が参加、句会後の懇親会ではワインの杯を傾けながら、和気藹々のうちに歓談が尽きませんでした。
☆新春俳句会自選句(順不同)
俳縁の輪の広がりや日脚伸ぶ 山縣輝夫
母祖母と歌詞をつなげて手毬唄 津端きしを
酒蔵へ引き水ひびき初明り 青麻やす子
人日や浅草裏の昼遊び 網野月を
鉈一閃円空佛の眼冴ゆ 石田 等
寒鴉翔ちたる大樹昼暗し 出田浩子
東雲の奥羽山稜初日影 伊東鄙人
東西の窓開けしばし初外気 稲村節子
岩ひばりいよよ高みに去年今年 井原毬子
最後とのことわり増ゆる賀状かな 岩波清子
元旦や音色の鈍き酒をつぐ 宇井野靖子
水盤に水をさしをり松の内 宇井野洋子
少年の声変りして年明けぬ 上田美津
山上湖溢れゐるらし冬の滝 江島新子
せせらぎの落葉溜まりを避け流る 梶本若水
廻りつつ独楽文様の静かなり 葛生みもざ
大正に近付く昭和海鼠餅 栗林 浩
初富士のいつもの貌でありにけり 佐藤石松子
初暦顔の高さに掛けにけり 佐貫亜美
初詣列長々と諏訪大社 鈴木由紀子
鷽替へて余生の扉開きけり 鈴木良子
元旦や街の静かさ清々し 十河弘子
あの世までつひに煤逃げしおほせし 多田野分子
海底のやうな日暮や海鼠噛む 伊達公子
若水のせんせんと玻璃満しけり 筒井カヨコ
着膨れて腹も膨れて千鳥足 中島 泉
去年今年想ひ万感朝の風呂 西川謙子
食卓のクロスの強さ年明くる 西島晃彦
いや高き空の極みへ初雲雀 二ノ宮浩子
白鳥の珠解く飛翔日をこぼし 長谷川祥子
友の手になる京かぶら届きけり 林なおみ
松の葉に真珠玉持つ初日かな 松井ゆかり
エチオピア大使公邸松飾る 宮田應孝
知恵の輪のどうにもならず切炬燵 茂木好夫
貨車過ぐる枯野の音となりにけり 森下義彦
富士仰ぐところに坐して大旦 湯口昌彦
初御空つがいの鳩に追き越され 吉田光子
戦略のあるが如くに鴨並び 吉原正展
【当日の写真】
平成23年 新春俳句会
●下記の会員各氏の第1句集が刊行されました。おめでとうございました。
宮田應孝(30年政経「澤」同人) 『新涼』平成21年11月刊
筒井カヨコ(35年英文) 『華さび』平成22年4月刊
津端きしを(33年政経「狩」同人)」 『端居』平成22年6月刊
●学習院俳句会の活動状況
句 会 毎月1回開催
吟行会 随時開催
「オール学習院の集い」参加 どなたでも参加自由の天幕句会開催
合同句集「岩ひばり」発行(不定期)
●学習院俳句会は超結社の楽しい句会です。
学習院卒業生で参加ご希望の方は、下記の世話人までご連絡ください。
●代表者 津端隆二 (33年政経)
世話人 二ノ宮浩子(33年英文)
TEL/FAX 047-343-3812