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学習院大学香山健一ゼミ

香山健一ゼミ・松籟会総会の報告

去る令和6(2024)年3月2日、学習院創立百周年記念会館の会議室で、法学部の香山健一(1933~1997)先生のゼミOB会である松籟(しょうらい)会総会が開催された。
この松籟会の名付け親は、香山先生である。中国の古典にも造詣の深かった先生は、中国の戦国時代の思想家・荘子の
「汝(なんじ)人籟(じんらい)を聞くも未だ地籟(ちらい)を聞かず。汝地籟を聞くも未だ天籟(てんらい)を聞かず」
という、人・地・天の発する三つの響きを表したこのフレーズを好んでいた。そのためであろう、「松の梢に吹く風の音」の意味である「松籟」という言葉を選び、卒業生が松のようにたくましく、大らかに「将来」を生きよと命名された。
先生が亡くなられたのは今から27年前の3月で、ゼミの32期生が最後の卒業生となり、彼らは50歳に手が届く年となった。1期生はすでに80歳を超え、多士済々の卒業生60名ほどが集った。
コロナ禍により開催がしばらく中断していたので、第一部をパネルディスカッション、第2部を懇親会という本格的な行事にしてみた。パネルディスカッションのテーマは、「香山健一の世界――日本をどう設計したか、そして今。」である。
まず、香山先生の愛弟子である畠山圭一(学習院女子大学教授)さんは、香山先生の著書などから思想の骨格となる13の視点を抜き出し、どのような日本を設計しようとしたかを明らかにした。次に、香山先生の対外的な活躍の場であったシンクタンクの社会工学研究所に勤務していた長友眞理子さん(10期)からは、「グループ1984」での執筆や、大平正芳内閣での活動の舞台裏を語った。さらに、松籟会の会長でもある豊田利男さん(3期)からは、日本の政治や教育界のしがらみの中で、香山先生の改革が必ずしも上手く機能しなかったとの分析がなされた。そして産経新聞社・正論調査室長の有元隆志さん(23期)からは、香山先生の改革の視点を現在進行形の現代史の文脈の中でどう位置づけるかを提示した。
この4人のパネリストに共通していた問題意識は、現代日本の「哲学の貧困」であり、上述した「天籟を聞かず」ともいうべき自然の摂理が響きにくい、ぎくしゃく感に対する心配であり危機感であった。ちなみに、ゼミOBで作成した香山健一先生追悼集のタイトルは『天籟を聞く』(私家版、1998年3月刊)である。参加者との質疑応答も活発に行われ、あっという間に予定時間が過ぎた。
第2部の懇親会では、冒頭で香山先生の博子夫人の挨拶と、次女・里絵さんからは国立国会図書館の憲政資料室には「香山健一関係文書」が所蔵されている旨の近況報告があった。輔仁会館二階さくらラウンジでの立食パーティーは、歓談の輪がいくつも広がり、春の訪れを感じさせる有意義な総会となった。[文責=真部栄一(香山ゼミ13期)]

松籟会(学習院大学香山健一ゼミ) 総会のご案内

令和6(2024)年2月吉日
松籟会会長 豊田利男(3期)

拝啓 学習院大学香山ゼミ並びに関係者の皆さまには、ご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、私どもの恩師・香山健一先生が亡くなられたのは、平成9(1997)年3月21日で、その9日後の同年3月30日には、目白の学習院創立百周年記念会館で松籟会の主催による「香山健一 お別れの会」が開催されました。桜が舞う中でお別れをした光景は、今でも鮮明に記憶に残っています。
時は経て、今春は香山先生没後27年となります。そこで、コロナ禍で中断しておりましたが、下記の概要で松籟会総会を開催いたします。会場はやや手狭となりますが、皆さまのご出席をお願い申し上げます。

敬具

――記――

日時  令和6(2024)年3月2日(土)午後2時(開場:午後1時30分)
場所  学習院創立百周年記念会館 4階第4会議室
・・・式次第・・・
【主催者挨拶】 松籟会会長 豊田利男(3期)
【第1部 パネルディスカッション】

テーマ:香山健一の世界――日本をどう設計したか、そして今。
司 会:真部栄一(13期、21世紀研究会・代表世話人)
【基調発表】
① 畠山圭一(学習院女子大学教授):香山先生が描いた日本の設計図
② 長友眞理子(10期):社会工学研究所(社工研)で香山先生がしていたこと
③ 豊田利男(3期):9つの改革の成功と失敗
④ 有元隆志(23期):香山先生の政治改革の視点と現代日本の課題
【パネルディスカッション】
パネリスト:畠山圭一、豊田利男、長友眞理子、有元隆志
(司会進行:真部栄一)
【質疑応答】

第1部終了    終了後、場所を移動して懇親会

【第2部 懇親会】場所:輔仁会館2階さくらラウンジ 会費:5,000円

開式:午後5時 閉会:午後6時30分
乾杯:能美芳裕(15期)
近況報告(一人3分程度)
閉会挨拶:香山博子さん、林 里絵(香山先生の次女)予定

以上