香山健一ゼミ【松籟会研究会】の報告

法学部の香山健一先生(1933~1997年)は、戦後の政治史に大きな足跡を残した。そのゼミのOB会である松籟(しょうらい)会(会長:豊田利男、ゼミ3期生)の総会は、コロナ禍で中断していたが、昨年2024(令和6)年3月に久しぶりに開催することができた。
今後は総会を3~4年に一度開催予定のため、その間、従来行われていた21世紀研究会を【松籟会研究会】と改称して毎年春に開催しようとなり、過日の2025年3月1日(土)に学習院創立百周年記念会館の会議室で行われた。
もともと旧名称の21世紀研究会は、1993(平成5)年に香山先生も出席し、ゼミ卒業生と現役学生の交流の月例会として発足した。先生の没後再開して、年に1~2回ほどのペースで卒業生が仕事の内容や近況を発表しあう場として、10~20名ほどの参加者で長年、行ってきた経緯がある。
昨年の総会時の名簿を頼りに開催メールを送付したところ、45名の参加という総会時の75%という高い出席率となった。これまでは各界で活躍するOB一人の発表としていたが、今回より発表者を二人として、より関心の高いテーマ設定にしたことが功を奏したのかも知れない。
その二人の発表者とテーマは以下の通り。
無相大拙(13期生)【AIでビジネスは、こう激変する!】
飯村久美(旧姓斉藤、29期生)【定年後の生活設計――聞けば得するお金の話】
一人目の無相氏は、1979年に日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行しファンドマネージャーの責任者として活躍。現在は医療ビジネスにAI(人工知能)を活用し、人件費の削減と事務処理のミスを防ぐシステムの開発・販売を行う会社の代表を務めている。このAIのプラットフォーム(システム開発基盤)づくりに世界各国はしのぎを削っており、日本の立ち遅れを憂慮し、さまざまな課題を提示した。
二人目の飯村さんは、1995年に損害保険ジャパン(旧安田火災海上保険)に入社し、在職中にファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得して出産後、退職。自宅で人生設計とお金に関するミニセミナーを開催したところ、好評だったため事務所を開設しテレビ出演や講演なども数多く行っている。発表では、高齢化社会の中にあって介護など一人で悩みを抱えずに、さまざまな行政サービスの活用事例なども興味をひいた。
無相氏の「プラットフォーム」、飯村さんの「人生設計」は、期せずして「制度設計」につながる話であった。私たち日本人はともすると、この制度設計が余り得意ではないためか、参加者は興味深く二人の話を聞いていた。
研究会の終了後、昨年の総会時と同じく、学内の輔仁会館2階さくらラウンジで立食形式の懇親会が開かれた。冒頭の挨拶で香山先生の学問上の継承者である畠山圭一先生(学習院女子大学教授)から、「仏作って魂入れずということわざがあるが、むしろ、魂を入れる仏作りが必要であり、香山先生の教えを学んだ卒業生の志が、この松籟会に集(つど)っている」と、これも制度設計につながるお話であったように感じた。
ビールと食事を楽しみながら、歓談の輪は途切れることなく続いた。来春も松籟会研究会を開催予定であり、会員名簿の充実を通して広く告知を図っていきたい。
[文責:真部栄一(ゼミ13期生)]


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